いるかホテル

小説、映画、ノベルゲームが好きです

『うみねこのなく頃に』について

以下、『うみねこのなく頃に』(07th Expansion)のネタバレを含みます。 あまりにも語るべきポイントが多すぎて一周回って「愛がなければ視えない」としか言えなくなる。ただ僕は、EP8までやって漫画版の「Confession of the golden witch」を読んだ後は、…

『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』について

以下、『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』(きゃべつそふと)のネタバレを含みます。 とても好きなライター冬茜トムの新作。なのだけど、僕はファンタジーやバトルやチームの友情ものがどうしても苦手で、発売直後に買ってから積んでしまっていた。でもやっ…

冬茜トム合同誌『緋色と雪色の彩典』感想

今年の夏コミで頒布された冬茜トム合同誌『緋色と雪色の彩典』(半結晶性みぞれ)の感想です!著者名敬称略で、お願いいたします。 睦月:外堀埋めもお任せあれ(さいりん) 「空色の和服に淡い黄色の帯を締め、薄く化粧をした遠子は美しかった」のところで…

2022/09/16

Twitterでかなり内容のあることをつぶやいてしまった。せっかくフォロワーの方が話しかけてくれたのに、「隙あらば」みたいになってしまって申し訳ない。。たださすがに、呟きの内容に対してもうちょっと補足しておきたいと思う。「内容のあること」を呟くの…

2022/08/07_近況

最近読んだ小説や観た映画、プレイしたゲームの感想について書きます。 小説 昨年はSF恋愛小説みたいなのばかり読んでいた。その最たるものがスタニワフス・レムの『ソラリス』で、あとは秋山瑞人の『イリヤ』とか桜坂洋の『ALL YOU NEED IS KILL』とか、そ…

前回の記事のつづき。『さくレット』付記。

takatagiri.hatenablog.com 前回、「現実に対して別の仕方で意味づけを行う」というフィクションの作用について書いた。そしてその作用は、とりわけ『さくレット』で全面的に発揮されている、とも。 しかし、フィクションがもつそうしたポテンシャルは、いわ…

ジュエハ買いました、と冬茜トムへの思いを少しつづる

きゃべつそふと新作『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』を買った。自分がプレイする冬茜トム作品は、発売時系列順に『彩頃』『あめぐれ』『さくレット』からの4本目。 冬茜トムは、少なくともいま美少女ゲーム業界にいるライターのなかでは突出した才能をも…

『彼氏彼女の事情』

庵野秀明『彼氏彼女の事情』を見終わった。 これまでそこそこたくさんのフィクションに触れてきたけれど、ある作品に対して本当に何も語りたくないと感じたのははじめてだった。 物語があまりに完璧だと「何も付け加えることはないけれど、この物語を語り継…

アスカやサリンジャーについての話

ずっとアスカのことを考えている。 前回の記事で書いたのは一般的に通用するだろうというシンエヴァ評で、個人的に突き刺さった部分は結局アスカの描写に集約される。 それについてはなんとか文字にして「アスカについての個人的な話」とかタイトルつけて残…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』について

以下ネタバレ感想。 本作品は庵野秀明が新世紀エヴァンゲリオンを終わらせる物語である。それ以上でも以下でもない。 だがエヴァが終わるということは、単にひとつの作品が完結するという事態にとどまらない。シンエヴァは、新世紀エヴァンゲリオンに影響を…

R.I.P. Nujabes

先日2月26日は、敬愛するトラックメイカーNujabesの11回忌だった。 しばしばNujabesはlofi chillやjazzy hiphopとして括られる。けれどそういう音楽がなぜか流行りだす以前から、すでに彼はそうしたカテゴリのずっと向こうを見据えて音楽を作っていた。 命日…

るぺかり

圧倒的初期西尾維新感『冥契のルペルカリア』(ウグイスカグラ)いきます*1 *1:天使奈々菜は葵井巫女子の親戚で、匂宮めぐりは殺し名第一位匂宮雑技団の一族で、折原氷孤の「あはっ」は荻原子荻リスペクト以外のなにものでもないと思ってる

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』について

死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。(村上春樹『ノルウェイの森』) 人の人生の中に《死》はある。《恋人の死》だって起こりうる。誰にでもだ。でもそれを書くとき、それがいかに悲しく悔しいかなんてことには僕は興味がなくて、僕が…

ブログの名前

ブログの名前「いるかホテル」の由来は、敬愛するブログ「ワザリング・ハイツ」を意識して。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』に対抗できるのは村上春樹の「いるかホテル」ぐらいでしょうという。 sengchang.hatenadiary.com 「ワザリング・ハイツ」が素晴らし…

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』について

新年一冊目の小説として、村上春樹が昨年訳したカーソン・マッカラーズの『心は孤独な狩人』(1940)を読んだ。 あらすじ 1930年代末、戦争の足音が迫りつつあるアメリカ南部の貧しい町。そこで暮らす人々はみな、何らかの苦しみと孤独に闘っている。音楽の才…

20210203

ブログはじめました、大畑です。小説や映画やノベルゲームの感想を主に書いていこうと思います。 開設のタイミングで、カーソン・マッカラーズの『心は孤独な狩人』という最近村上春樹が訳した小説と、内山拓也監督の『佐々木、イン、マイマイン』という映画…

冬茜トム『アメイジング・グレイス』について

きゃべつそふとの二作目であり、ループもののノベルゲーム『アメイジング・グレイス』(2018)をプレイした。 あらすじ 主人公シュウは目が覚めると、すべての記憶を失い不思議な「町」にいた。その街並みはまるで中世のヨーロッパのようで、人々は芸術や美を…

萌えという感情、あるいはノベルゲームを残していくために

1 ノベルゲームというジャンルがある。美少女ゲームやエロゲとも呼ばれ、キャラクターの立ち絵を背景にテキストが読み進められていくPC向けのゲームだ。90年代後半からゼロ年代にかけて、ノベルゲームは間違いなくサブカルチャー全体のフロンティアだった。…